読みながら我も熟れる

最近、手にした絵本の中で「いいなあ」と素直に感じた一冊だ。色彩感が抜群である。季節ごとの夕焼け、夕暮れと人々の有り様を描きながら、短い文章を添えていく。大人ならば、いつかどこかで見かけたような懐かしさも感じながら、一枚一枚に浸っていけるページが続いていく。夕闇、星空と結ぶラストもいい。
最後の見返し部分に「作中詩『熟れる一日』(吉野 弘)」と記されている。好きな詩人…直接、話を聴いた経験が懐かしい。絵本の中で一人の子が広げている本に、その詩の冒頭部分が小さく印刷されている。同名の有名な作品もあるが、これも一日のうちのその時間、事象を表すいい詩だと思う。こんなふうに始まる。
赤い水瓜(すいか)の内側のような
夕焼け。
こんなに良く熟れる夏の一日もある。
さて語り方である。短い文章の連なりで構成されているが明確なストーリーになっているわけではなく、それぞれの風景が最後の「ゆっくり おやすみ」でまとまる形である。従って一字一字を噛みしめるような雰囲気を出す。擬音がありその工夫もポイントか。何より自分なりの緩急や間をとって楽しむことにしよう。