カブトの背中に乗って飛ぶ夢を…

先月はセミを取り上げたので、夏の虫をもう一つと考え「カブトムシ」の話を探し見つけたのが、この絵本である。初めは、なんとなく「科学絵本」のように土の中での成長の様子が描かれるが、成虫になり主人公の「こんちゃん」と対面してからは、ファンタジーとも呼べる展開になる。身体の大きさが20倍超か(笑)

「カブトくん」と、こんちゃんや友だちとの公園での遊ぶ姿も描かれる。こんちゃんとは家で一緒に風呂に入り、一緒に寝て…虫好きの子どもたちの一つの夢かもしれない。しかし、カブトくんは「だいすきなよる」に、外へ出て町へ向かう。朝になって、探していたこんちゃんと再会を果たすのだが、その後二人は…
色鉛筆やクレパスを使った淡くやさしい色彩が全体を覆い、じわりとやさしい気持になっていくような画風である。最終的に二人は別れるが、それは日常の世界でも同様である。カブトムシの人気は依然として高いようだ。ふと、昔口ずさんだ、井上陽水の「ゼンマイじかけのカブト虫」という曲が思い出された。
「幸福(しあわせ)に糸つけ、ひきずりまわしていてこわれた」と、なんともシニカルな歌詞だった。その述懐はやはり大人感覚だが、あどけなく虫と戯れる時間の幸福は換え難いものだろう。虫に触れる子も触れない子も、せめて絵本の中で、カブト虫の背中に乗って飛ぶひと時に思いを馳せる時間を作ってやりたい。