「家族の幸せな形」を喩えれば

今が旬の作家の一人と言っていいだろう。早見和真の新作『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』を読む。なかなか洒落た題名だ。中学受験を控える小学生女子が主人公である。そこから想像できるように、テスト設問の形で登場してくる文言だ。家族小説というジャンルがあれば、当てはまるか。
ぐいぐいと読者を引きこむ文筆力はさすがだと思う。個々の人物像も際立っているし、既刊人気小説のキャラクターも登場させて面白みを加えている。何より、「問題。」の回答が示されている。引用すると「そんなもの四十字以内なんかで答えられるか。さすがに大西先生(注・筆者)に失礼だ、バカって。」の部分だ。
説明文ではないので、さすがに無理のある紹介だ。ただ、その箇所がほぼ最終場面にある意味は、いわば「家族の幸せの形」は筋書きの中に盛り込まれている、もしくは練り込まれている証拠である。読者は「結論」だけを求めて読み進めはしないだろうけど、展開の中に共鳴する部分をいくつか見つけられるはずだ。

ところで、今さらながら小中学生などの「受験」と選択肢の幅が及ぼす影響を考えさせられた一冊だ。都会や比較的大きな地方都市での塾通いは、親の考え方以上に家庭環境の格差を見せつけるが、最低限の安全、健康さえ確保できれば、どんな環境でも子どもは育つ。学ぶべき何かとどんな出会いをするかが肝心だ。
書名に返り『家族の幸せの形を答えなさい』で妄想してみる。図形で答え理由づけるのはどうか。「円」「三角形」…「ハート」「ギザギザ」も認めよう。いや何か物体でもいいか。現状はどうあれ、自分の家族の幸せなイメージを形で思い浮かべる作業は無意味ではない。高齢者二人の我が家はさしずめ「あんぱん」か。