職人の技、きらめく映画

三年前の夏、本当に久しぶりに時代小説を読んでああ面白かったと思ったのは『木挽町のあだ討ち』だった。やはり直木賞、山本周五郎賞のW受賞作にハズレはない。いつか映像化されるかと思っていたら、案の定今春に封切られた。ただ秋田市の映画館まではと二の足を踏んでいたら、連休後に大曲で公開された。
その初日初回、観客は二十人足らず。ほとんど年配者というのは平日なので当然か。注目していた訳は原作ありきだが、監督・脚本が源孝志に納得した。NHKBSドラマ「京都人の密かな愉しみ」等いい作品がある。映像美としては、冒頭のあだ討ちシーンがやはり真骨頂だったと、見終わってから改めて思った。
その場面は芝居・歌舞伎の要素が入っているわけで、原作のミステリの筋立てと絡む。その意味で小説を読んでいない方が、この作品を楽しめたかも…と少し頭をかすめた。家へ帰ってから特設サイトを覗いてみたら、多くの有名人たちの感想があるなかで、某有名脚本家が「悔しい」と評すほどに魅力ある設定だ。
さて、俳優陣は充実していた。個人的には菊之助役はアイドルではなく歌舞伎同様に染五郎にやってほしかったが、後は渋い所でまとめた。特に山口馬木也など『侍トリッパ―』出演者を三人見つけたので、京都色?が濃かった。一番頑張ったのは北村一輝かもしれない。その個性が余すところなく生かされていた。
「木挽町」は今の東銀座、歌舞伎座のある場所だ。名前の由来は木を扱う木挽職人が住んでいたから、つまり「職人」の町。「あだ討ち」の菊之助を支える者たち(呼び込み、衣装方、殺陣師、小道具方そして戯作者)は、いずれもその腕を存分に発揮して、一世一代の舞台をつくり上げた。そこに日本人は惹かれる。