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今、頬に感じる風を楽しめれば…

読書録24~言葉を拾うその前に

すぷりんぐ
 もし「今月の流行語大賞」という企画があれば「私は米を買ったことがない」になるかもしれない。確かにツッコミどころ満載の言葉だが、それを拾って深く考えてみる前に、マスコミや様々な情報がああだこうだと圧しつけてくる感が強く、それに慣れっこになっている自分に気づく。それは心身を鈍らせないか。





 著者はまえがきにこう書く。「言葉を大切にする人間は、暮しを軽蔑しない人間だ」…『暮らしの手帖』の連載がまとめなおされた一冊の核になる一節だ。では「大切にする」とは、どういうことか。具体的な行為として「見つける」「考える」「意味づける」「反映させる」ことが思いつく。ずいぶん時間がかかる


 職を持たない自分のような者であれば、それも可能…いや、これは意識し続けなければ到底できない。「米を買ったことない」騒動の決着が、結局は個人の資質、政治家の体質に消化され、政局の要素になるだけを繰り返すこの国では十分な注意が必要だ。拾うべき言葉かどうか、一旦立ち止まり判断する癖が必要だ。


 2016年から2022年までまさに揺さぶられ続けた時期、著者の拾った様々な言葉もきちんとピン止めしておかなければ、いつの間にか落ちこぼれる。読みながら自分の気持ちを思い起こし、ピンを止め直した。政治の右傾化、コロナ感染防止初動時の動き、東京五輪への言説、そして顛末…しっかり覚えておきたい。


 言葉を取り上げ世の中を批評し続ける著者が「矛盾したことを言うようだが、言葉を探しすぎる、拾い過ぎるのもよくない」と書いた一節がある。それは谷川俊太郎の絵本『ぼく』の創作を追ったドキュメンタリーでの発言に依っている。曰く「言葉を介さないで感じ取るってことがすごく大事だ」。俯瞰してみたい。
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